五歳の父の手を引いて、乳飲み子の父の妹を背負い、親戚の家を訪ねた直後、父の母は胃潰瘍で倒れ亡くなった。
私の祖母に当たるその人が亡くなった日、何故か父は道端で一心不乱に石を拾っていたらしい。
その後しばらくして父を含め四人姉弟の下に後妻が入った。
祖母が
あの頃
食べ物が豊富で
産後の肥立ちも良く
胃潰瘍にもならず
元気に
子供が大きくなるまで生きていたら、
父は
果てしない承認欲求を持て余すかのように
目立ちたがり屋になったり
口達者になったり
楽しむ女と子供を生ませる女を使い分けたり
善い父を演じたり
その裏で、病気で寝ている妻の頭をけ飛ばしたり
子供に浮気を咎められると嘘をつくことも出来ず
かと言って認めることもせず
目を真っ黒にして話を逸らすことしか出来ない男にはならなかったのではないか。
祖父が亡くなり、その後何年かして後妻の祖母が亡くなったとき、彼女の骨が祖父と同じ場所に収まることはなかった。
先祖代々の墓の横の何もない地面に、小さい石が一枚置いてある。線香も花も置かれていないし何も書かれていないその石の下に祖母の骨は埋まっている。
その二つの墓の前に立つとき思う
何がいけなかったのか
戦争がいけなかったのか
医療の進歩が遅すぎたのか
人を見る目がなかったのか
恨むことをやめられなかったのか
私は何も知らない。
ただ一つ、この血を遺してはいけないことだけは分かる。